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12本目を買う夜に、本当に欲しかった香りの話。

12本目を買う夜に、本当に欲しかった香りの話。 - Perfume
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棚に12本あるのに、まだ買い足したくなる理由

香水を10本以上持っているのに、デパートのフレグランスカウンターに行くとまた何か買いたくなる。この感覚は香水好きなら多くの人が経験していると思います。

「コレクター気質だから」と片付けられがちな現象ですが、実はもう少し根が深い理由があります。すでに持っている10本以上の香水が、すべて「場面」のために選ばれていて、「自分のため」の1本がコレクションに入っていない、という状態です。

この記事では、その「足りなさ」の正体を整理した上で、Byredoのバイブリオテークとブランシュという2本がなぜ「自分のための1本」になりやすいのかを解説します。

「12本あっても足りない」と感じる本当の理由

香水を12本持っているということは、12通りの場面に合わせた香りを揃えたということです。仕事用、デート用、休日用、夜用、雨の日用——それぞれに合わせて選んできた結果が、棚に並ぶ12本です。

ここで起きるのが、すべての香水が「他人にどう見られるか」を基準に選ばれている、という状態です。会議で振り向かれたい、デートで好印象を持たれたい、写真映えしてほしい。気づけば、香水は自分の外側に向かってばかり開いています。

足りないのは、誰にも届けるつもりのない、自分のためだけの1本です。気づかれなくてもいい、評価されなくてもいい、ただ自分の手首から立ち上がる香りで自分の輪郭が整う、というだけの香水。多くのフレグランスマニアは、この役割を担う1本を持っていません。

Byredoというブランドが特殊な理由

Byredoは2006年、スウェーデンのストックホルムで創業した香水ブランドです。創業者のベン・ゴーラム氏はインド系・カナダ系の血を引き、北欧で育った経歴を持ちます。

Byredoの香水が他のニッチブランドと違うのは、「説明しないこと」を美学にしている点です。商品名はジプシーウォーター、ローズオブノーマンズランド、バイブリオテークなど、聞いただけでは何の香りか想像できないものばかり。広告も最小限で、SNSでバズる作りもしていません。

それでも世界中のフレグランスマニアが定期的に戻ってくるブランドとして、20年近く支持され続けています。理由は、Byredoの香水が「他人に見せるための香り」ではなく「自分が纏うための香り」として設計されているからです。

香水好きのコレクションで、最後に追加されるブランドの1つとしてByredoの名前がよく挙がるのは、このブランドの立ち位置によるものです。

バイブリオテーク|誰にも会わない夜のための1本

バイブリオテークはフランス語で「図書館」を意味します。Byredoが2017年に発表した、桃の皮のフルーティさとスエードの質感を組み合わせたフレグランスです。価格は24,200円。

香りの構成は複雑で、トップに桃とプラム、ミドルにピオニーとバイオレット、ベースにスエードとパチョリが配されています。革張りのソファに座って古い本を開いたときの匂いをイメージして作られたという背景があり、確かに纏うとそういう情景が浮かびます。

この香水の特徴は、「使う場面」がはっきりしないことです。仕事に合うとも言えない、デートに合うとも言えない。どちらかと言うと、誰にも会わない夜、自宅でひとり過ごす時間に向いている香水です。寝る前に手首にひと滴落とすと、シーツの上で30分ほど香りが続いて、それが消える前に眠りに落ちる、という使い方が一番しっくりきます。

他人のためではなく自分のために香水を纏う、という感覚を体験するには最適な1本です。

ブランシュ|白という色を香りで表現した1本

ブランシュはフランス語で「白」を意味します。Byredo初期の代表作のひとつで、創業者ベン・ゴーラム氏が「母親の白いシャツの匂いを再現したかった」と語っている香水です。価格は24,000円。

ホワイトローズとブロンドウッドが主軸で、ヴァイオレットがほんのわずかに香ります。バイブリオテークの「重さ」とは対照的に、こちらは「軽さ」「透明感」が特徴です。

面白いのは、ブランシュを纏うと視覚的にも明るい印象を与えることです。雪の朝、洗いたてのシーツ、誰もいない教会の朝の光——そういった「白」が連想される場面に合います。フォーマルな場でも嫌味にならず、休日のリラックスした服装にも馴染みます。

バイブリオテークが「夜の自分」のための香水だとすれば、ブランシュは「朝の自分」のための香水と考えるとわかりやすいです。両方を半年ほど使うと、自分が朝型なのか夜型なのかが香りの好みでわかるようになります。

よくある質問

Q. バイブリオテークとブランシュ、どちらから買うべき?

A. 夜にひとりで過ごす時間が多い人はバイブリオテーク、朝の身支度を大切にする人はブランシュから始めるのがおすすめです。どちらが先でも、もう1本は半年以内に欲しくなる可能性が高い2本です。

Q. Byredoは1本2万円超ですが、その価値はありますか?

A. 値段だけ見れば決して安くはありません。ただ、Byredoは「他人を振り向かせる強さ」ではなく「自分が纏って心地よい密度」を作るブランドです。香水好きが10本以上持つようになった段階で、初めてその価値が実感できる価格設定だと言えます。

Q. サンプルから試せますか?

A. Byredoは8種類入りのディスカバリーセットを用意していて、約1万円で試せます。ただし、Byredoの香水は半日纏った後の残り香に本領があるので、サンプルだけでは判断しきれない部分もあります。

まとめ|13本目に選ぶべき1本

棚に12本あっても満たされない夜は、12本目までの香水がすべて「他人のため」に選ばれていたサインかもしれません。13本目に選ぶのは、誰にも届けるつもりのない、自分のためだけの1本です。

Byredoのバイブリオテークもブランシュも、それぞれ24,000円前後と気軽な値段ではありません。ただ、この2本が棚に加わると、これまでの12本の役割もはっきりしてきます。

ニッチ香水のさらに深い世界については、Le LaboやFrederic Malle、Serge Lutensまで含めた中級者向けランキングも別記事で公開しています。あわせて読むと、自分の次の1本がより具体的に見えてくるはずです。

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